ファンタジー小説の定番の一つとしてあるのが、人々の身分差です。
市民よりも特別階級である貴族は、市民よりも高い権力を持ち、市民たちを支配していました。
さてそんな貴族達ですが、実際の所どういったものなのでしょうか?
歴史からみる貴族と、ファンタジーでよく見る貴族について見ていこうと思います。
目次
現代世界における貴族階級とは?
そもそも貴族とは何でしょう?
支配階級として当たり前となっている貴族ですが、その歴史は古く、古代ギリシャ、古代ローマの時代から存在していました。
時代によって貴族の様相も変わっていきますが、中世ヨーロッパ時代の貴族は「王」の下に付いていました。
貴族には上下関係があり、日本では専ら以下のように分類されています。
爵位 | 日本名 | 解説 |
グランドデューク | 大公 | 王の息子や王家の分家の長など |
デューク | 公爵 | 王家に連なるもの、それに匹敵するほどの大貴族 |
マーキス | 侯爵 | 領地を持った諸侯 |
アール | 伯爵 | 土地を持った貴族 |
バイカウント | 子爵 | 副伯ともいう |
バロン | 男爵 | 貴族の最下位 |
バロネット | 准男爵 | 男爵より下で、貴族に含まれないこともある |
ナイト | 騎士 | 位を持たない貴族 |
日本名訳として付けられた大公~騎士までの名前ですが、こちら日本の爵位を半ば強引に訳しているので、正確には違うようです。
日本の爵位の大本は中国の五爵(公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵)が元になって作られたようです。
上記のリストで気になるのが、侯爵と伯爵の違いだと思います。
侯爵が「領地をもった諸侯」だったのに対し、
伯爵が「土地をもった貴族」となっています。
何が違うのでしょうか?
侯爵と伯爵の違い
この二つ、土地を持っているという意味では同じです。
ですがその土地の大きさと権力が違います。
分かりやすく日本で例えると、侯爵が広大な領土を持った「大大名」
伯爵がそこまで大きくない「少大名」と言ったところでしょうか?
男爵以下である、准男爵、騎士は貴族位を持ちません。
ただし、騎士は一代限りで合ったのに対し、准男爵は世襲制でした。
騎士について
騎士が生まれた当時、多くは貴族でした。
それは馬や鎧などの経費がとても掛かり、貴族でなければ維持出来なかったからでした。
その後騎兵は富裕層の商人や富豪、傭兵達が実戦力として使われるようになり、次第に騎士は貴族ではなく裕福な市民として設けられるようになっていきます。
その後騎士はゲルマン人との戦いや、鐙、蹄鉄の発明により馬上での戦いが出来るようになったことで、次第に戦闘において主役となっていきます。
そして騎士は領主と主従関係を結ぶ様になり、支配階級の下部に置かれ、有力者に軍事奉仕をする見返りに授与される特別な身分となります。
辺境伯について
時たま小説などを読んでいると、出てくるこちらの階級「辺境伯」ですが、この辺境伯とは一体どういったものなのでしょうか?
元々はと言うと、国の防備の為に置いた軍事地区の指揮官として設けられた、地方長官の名称でした。
敵や異民族と戦う必要が有ったため、強い権限が与えられていた辺境伯は、伯爵よりも高い地位に有ったようです。
その後、辺境伯の地位は更に上がり、侯爵と同等、もしくは公爵と同等の権力を持つようになりました。
その後ドイツでは更に権力を増し、一つの地方国家として認められるところまで権力を拡大させます。
ところで、辺境伯は「辺境」の字が付いていますが、特に辺境とは限らない事も有ったようです。
交易都市を領地に持っていたり、国の中央に土地を持っている辺境伯も居たようです。
ファンタジーにおける貴族設定
ファンタジー小説における貴族設定ですが、基本現代世界の貴族社会とそこまで大きく離れている様子は有りません。
強いて言うので有れば、やはり題材的に使いやすい公爵、大公辺りはよく使われる傾向が有ります。
また騎士はファンタジー世界において基本貴族であることが多いです。
騎士は貴族で有ることにプライドを持ち、平民出身の騎士に対して酷い扱いをする展開が主流です。
また辺境伯はそのままの意味で辺境に領地を持つ事も多いです。
これは名前からして辺境で有ったほうが分かりやすく、また他国と戦争をしている物語であれば、辺境伯本来の仕事である、他国からの進行を防ぐ。という事をストーリー上で任せやすいからだと思われます。
爵位は土地が持つものだった
日本の爵位は基本一つの家に対して1つの爵位でした。
例えば佐藤男爵という人が居た場合、「佐藤男爵家」があって、そこの当主が男爵でした。
佐藤男爵は男爵位だけしか持てず、他の爵位は持つことが出来ません。
それに対し、西洋において、爵位は担当する行政区域に対して与えられるもので、日本の様に家に対して与えられるものでは有りませんでした。
そのため、沢山の領地を持つ貴族は、それだけ沢山の爵位を持つことになります。
(例)
A町=男爵相当の土地
B都市=子爵相当の土地
C領土=侯爵相当の土地
この3つを佐藤さんが持つとすると、佐藤さんの爵位は
侯爵兼子爵兼男爵 になるわけです。
偉い人が公式訪問した時は、全ての爵位を読み上げるのが礼儀となっています。と言うことは、
「C領土侯爵にしてB都市子爵、A町男爵である佐藤○○様がご到着致しました」となるわけです。
西洋において7つも8つも爵位を持つことは珍しく無く、つまり7つも8つもこのような爵位読み上げが行われていたことになります。
長ければ長いほど偉いという事なのですが、何という時間の無駄。
そのため、普段の生活においては一番偉い爵位で呼ばれることが多かったようです。
これら多くの爵位は家族や一族に分け与えることも可能でした。
ファンタジーにおける爵位の持ち方
さて、では日本でよく見るファンタジー小説はどうでしょうか?
日本のファンタジー小説は、家に対して1つの爵位といった使われ方が多いように思われます。
と言うのも、領地を複数持つ事や、爵位を沢山持つ事を、ストーリー上で描く必要があまり無いからだと思われます。
ストーリー上で必要なのは、その人物の最高位の爵位であり、それに付随する領土と権力です。
最高位以外の爵位や領地などは、ストーリーの中で使われることが無いのが殆どです。
そのためか、次男、三男は領地を持たないため仕方なく騎士になる。という設定が多く見られます。
地球の西洋貴族であれば爵位と領地を貰えたかも知れませんが、ファンタジー世界の次男、三男は中々にハードモードな世界で生きているようです。
ファンタジー世界と地球における貴族の違いまとめ
地球の貴族社会の大まかな部分とファンタジー小説などでよく見る設定を比べてみましたが、そこまで大きな乖離は無いようです。
やはりファンタジーを書くにあたって、貴族は定番中の定番。寧ろ居ないほうが珍しい程ですが、その分しっかりと考えて書かれている小説が多いのでしょう。
貴族と言っても年代などで様式はかなり変わってきます。
ファンタジー小説においては貴族社会後期、一番華やかな時代を舞台に描かれることが多いようです。
中々に貴族も奥が深くて面白いので、小説を書く時に色々と調べてみると良いかと思います。